【専門家監修】
クローズ外構からオープン外構まで防犯に配慮した
外構プランをご紹介
オープン外構からクローズ外構まで防犯に配慮した外構づくりのポイントを、外構デザインのスペシャリストこと「エクスプランニング」の古橋 宜昌さんがご紹介!専門家による視点で安心・快適な住まいを叶えるアイデアが満載です。

PROFILE
古橋宜昌
有限会社エクスプランニング代表取締役
一級建築士/一級造園施工管理技士/
一級土木施工管理技士
エクステリア&ガーデンアカデミー校長
一般社団法人日本エクステリア設計協会会長
見た目の派手さや奇抜さだけではなく、住む方の立場に立ってコストや施工性、安全性、そしてメンテナンスまでも考えて、トータルでデザインを手掛けるエクステリアの匠。
防犯に配慮した外構づくりの基本
1. 目隠しは外から少し見える
「透け感」をつくる
「防犯」と聞くと、家の周囲を壁で囲むことを考えがちです。しかし、必要以上に高い壁は、反対に侵入者が敷地内で身を隠す場所となり、かえって狙われやすくなることがあります。防犯のためにフェンスや門まわりを計画するときは、周囲の家や通行人から適度に敷地内の様子が見える「透け感」をつくることが大切です。
たとえば、門まわりのフェンスを選ぶなら、縦格子のスクリーンがおすすめ。縦格子は正面から見ると中の様子がうっすらと透けて見えますが、斜めから見ると格子が重なり目隠し効果を発揮するため、プライバシーも確保できます。

2. 防犯機能のある
エクステリア(外構)アイテムを活用
外まわりの防犯には、エクステリアアイテムの活用が欠かせません。なかでも照明は設置費用もさほど高額でなく、防犯面で費用対効果の高いアイテム。夜間に外まわりが明るい家は、不審者も侵入をためらう傾向があります。
特に最近のLED照明は消費電力が少なく、夜通し点灯しても電気代をほとんど気にせずに使えます。さらに、周囲の明るさで自動点灯・消灯する明暗センサーや、タイマー機能を備えたタイプを選べば、留守中でも人がいるように見せることができるため効果的です。

また最近は、不審者が宅配業者を装って玄関を開けさせようとするケースもあります。そんなとき「宅配ボックス」があれば、不審者と対面することなく(非接触)、荷物を受け取れます。玄関前の置き配では不安な荷物の盗難リスクも防げるので、防犯対策に効果的です。


オープンな外構や、さまざまな防犯設備の設置が難しい場合は、道路と敷地の間にアーチを置くという手もあります。アーチは神社にある鳥居のように「ここから先はプライベートな空間」という結界を示す役割を果たします。アーチをくぐるという行為は気持ちの切り替えを促し、「入りにくさ」を感じさせる心理的効果が期待できます。

3. 建物のまわりにも防犯配慮を
敷地外だけでなく、建物のまわりにも注意は必要です。たとえば、昔から建物の脇や裏にある「犬走り」と呼ばれるコンクリートの通路。これは雨で土がぬかるんでも歩きやすく、また跳ね返る泥水で建物の外壁が汚れないようにするためのものです。
しかし、コンクリートの犬走りは足音がしないため、不審者にとって侵入しやすい通路になることがあります。防犯性を高めるには犬走りには砂利を敷き、歩くと音が出るように対策する方が良いでしょう。

建物のまわりではエアコンの室外機の取り付け位置にも注意が必要です。窓の近くに室外機を置くと、それを踏み台にして窓から侵入されることがあります。また最近は、室外機そのものを盗まれるケースもあるようです。室外機は窓から離し、室外機カバーを取り付けておくことをおすすめします。
暮らしの快適性と防犯性を
両立するために
外まわりは常に美しく整えておく
防犯と快適性を両立させるには、家の外まわりをきれいにしておくことが大切です。雑草や使っていない鉢植えなどが散乱していると、「防犯意識が足りないルーズな家」と不審者に見なされ、狙われやすくなります。整った外まわりは、暮らしを快適にするだけでなく、防犯意識の高さのアピールにもつながります。
● 外まわりが散らかっている家
● 外まわりが整っている家
将来を見据えた「引き算」の家づくりを
家づくりでは、建物を重視するあまり外構に十分な予算を割けないことがあります。そんなときは、残った予算で無理に外構プランを完成させるのではなく、「将来の拡張を見越した工事」にとどめておくことも必要です。
特に子育て世帯は、子どもの成長に合わせて外構に求める機能も変化します。子どもが歩き始める時期には道路への飛び出し防止、思春期には不審者の侵入対策など、その時々で追加工事が行いやすい外構プランを計画しましょう。


将来を見越した外構プランのコツは、理想の外構プランから「今は必要でないもの」を引き算してつくること。無理に設置して完成させても、その後必要になったアイテムを足すために一部を壊さないといけない場合もあるからです。外構は段階的に進化させるという発想を持っておくと、防犯性も都度レベルアップでき、将来の後悔を減らせます。
段階的に進化させていく
外構プランの考え方
一般的に外構プランを考える際、よく言われるのが「オープンか、クローズか」という2つの選択。しかし防犯配慮を考えると、「その2つだけでは十分とは言えない」と古橋先生はおっしゃいます。これまでご紹介してきた防犯配慮を盛り込み、家族の成長やライフスタイルに応じて「段階的に発展させていく」外構プランのつくり方をご紹介します。
1. 「スケルトンプラン」から始める
外構プラン

新築を建てる際、予算の都合でコンクリートを打って終わり、というケースは少なくありません。しかし、道路から玄関ドアが丸見えになったり、夏はコンクリートの照り返しで室内が暑くなったりするなど、防犯面や快適性の面で工夫が必要になります。

そこでおすすめしたいのが「スケルトンプラン」。これは、将来的な外構の拡張を前提に、必要最小限の要素だけをまず設計する考え方です。
スケルトンプラン

スケルトンプランでは駐車スペースや玄関アプローチはコンクリートで固め、庭部分は土のまま残します。これで後から植栽やエクステリアアイテムを追加する際も、大掛かりな解体工事を避けられるので、費用を抑えられます。
また、道路から玄関が見えにくいようにアプローチを少し曲げて、門袖壁を立てましょう。ここにポストやインターホン、表札を配置すれば、プライバシーと利便性を両立できます。

ポイントは、門袖壁を道路境界ギリギリではなく少し内側に下げて設置すること。前に出張るタイプのポストや照明は、道路沿いの壁に取り付けると道路にはみ出て法律上問題になるため、少し後ろに下げて設置しましょう。
2. 樹木や門袖壁の設置が
「オープン外構」の始まり

スケルトンプランに住み始めて、外構の印象をさらに高めたいと感じた場合は、土のままだった場所に植栽や樹木を追加するだけでも効果的です。
オープン外構

より変化をつけたいときは、「セミオープン外構」を検討しましょう。既存の門袖壁の奥にもう1枚壁を追加することで、空間に奥行きが生まれ、アプローチ全体が落ち着いた印象になります。また、奥に建てた門袖壁が玄関ドアの下半分を隠すので、奥行きも感じさせることができます。
セミオープン外構


こちらが「セミオープン」の外構プランの完成形です。入り口には「プラスG」のアーチを設け、「結界」を演出。宅配ボックス付きの機能門柱を配置し、非接触で荷物を受け取れるようにしました。さらに、リビングの掃き出し窓の前には縦格子のフェンスを設置し、視線を遮りながら適度な「透け感」を確保している点がポイントです。

3. 「セミクローズ外構」は
門扉の設置がポイント
「セミクローズ外構」はセミオープン外構からさらに防犯性を高めたプランです。この段階では門扉の設置が主なポイントになります。
セミクローズ外構

一般的に門扉は道路に対して平行に設置しますが、あえて直角に設置すると、門まわりがおしゃれに見えるだけでなく、不審者が敷地に侵入する際の心理的ハードルを高める効果も期待できます。さらに、駐車スペースから玄関に行けないように、駐車スペースの後ろにも壁や目隠しフェンスを設けることで、駐車場スペースはオープンでも、その先はクローズな外構をつくることができます。

夜間は「美彩」のスポットライトで樹木を照らしたり、「プラスG」のフレームにダウンライトを組み込んだり、階段の段差に間接照明を入れたりすることで、安心感と美しい外観プランを両立できます。


アプローチと駐車場の間には「フェンスAL」を設置し、その下に照明を仕込むと、夜間の景観が引き立ちます。プラスGのフレームは外構に高さのボリュームを出せるため、水平ラインを基調とした箱型の住宅によく合い、デザインのアクセントとしても効果的です。
4. 駐車スペースの門扉で
防犯性を高める「クローズ外構」
さらにしっかりと外構を囲いたい方は、駐車スペースの前にLIXILの「ワイドオーバードアS・オーバードアS」など跳ね上げ式の門扉を取り入れましょう。その後、壁やフェンスで囲むことで、「クローズ外構」の基本的な形が完成します。
クローズ外構


門袖壁の横に角材を3本ほど立てると、アクセントになりおしゃれな印象を与えられます。道路側に少し緑を見せると、閉塞感が和らぎ、柔らかい印象を演出できます。
5. 「ハイクローズ外構」で
最高レベルのセキュリティを
「ハイクローズ外構」の基本的なイメージは、駐車スペースにガレージシャッターを設置し、門周りには屋根を組み、門扉も屋根まで届く2m超えのものを取り付けます。これは特に高いセキュリティを求める方におすすめです。
ハイクローズ外構

以前はハイクローズ外構をつくるには、鉄筋コンクリートの構造物を施工する必要があり、完成までに約2か月かかっていました。しかし、LIXILでは現場で組み立てられるガレージシャッターが用意されており、施工期間はおよそ3~4日で済みます。仕上げを塗り壁やタイルにすることも可能で、効率的にハイクローズ外構を実現できます。

こちらはLIXILの「シングルシャッターS・ワイドシャッターS」を使用したプランです。シャッターはパイプタイプと羽根タイプから選べます。全体を羽根タイプにすると中が見えなくなるため、下半分を羽根タイプ、上半分をパイプタイプにしています。これにより、車のナンバーは隠しつつ、人の気配は感じられるデザインになっています。

門扉まわりは縦格子を入れ、玄関側が少し見えるように設計しました。縦格子の後ろにはシンボルツリーを配置し、緑と人の気配を感じられる空間にしています。また、門扉は道路に対して90度に設置し、「開き門扉AH」を採用することで、高級感のあるハイクローズ外構を演出しています。
6. 防犯性と費用を両立するなら
「ミニマムクローズ外構」

ただ、ハイクローズ外構はどうしても金額が高くなるため、費用を抑えつつ防犯性も確保したい、という声も少なくありません。そういった方におすすめしたいのが「ミニマムクローズ外構」です。
ミニマムクローズ外構

見た目はセミオープン外構とほぼ同じですが、建物の横に工夫があります。左側に門扉、右側に「プラスG」などのスクリーンを設置して、人が奥に入れないようにしています。これなら、開放感を保ちながら安心感を高められ、費用も抑えられます。

外構は、単に「オープンかクローズか」という二者択一で考えるのではなく、「スケルトン」「セミオープン」「セミクローズ」「ハイクローズ」といったように、段階的な発想で外構計画を立てると、美しさと防犯性を両立した理想の住まいを実現できるでしょう。




「透け感」はフェンスだけでなく、シンボルツリーについても同様です。落ち葉の掃除の手間を減らすためにシンボルツリーに常緑樹を選ぶと葉が生い茂り、不審者が身を隠す場所になることも。葉が密集しない透け感のある落葉樹なら、適度に敷地内が透けて見えるので防犯面でも安心です。