【建築家が解説】
旗竿地を最大限に活用する
外構づくりのポイント
「旗竿地(はたざおち)」とは、竿に旗がついたような形状をした土地のこと。その独特の形状から住まいづくりが難しく思われがちですが、ポイントを押さえることで、素敵な住まいを実現できます。今回は、旗竿地での建築実績も多い「クラフトアール」の宮窪翔一さんにプランニングのコツやアイデアをお聞きしました。
PROFILE
宮窪翔一
福岡県出身、1984 年生まれ。
大学院で建築意匠領域を修了後、デザインルバート一級建築士事務所設立。施主の要望とコストをまとめ上げながら唯一無二の住宅設計をおこなう。その後、住宅コンサルタントであった奥村友裕と出会い、分譲住宅のデザインを変えることに使命感を持ち、2017 年株式会社クラフトアール取締役へ就任。年間500 棟以上の監修、建築プロデュースを手掛ける。建築・デザインの受賞歴多数。
https://www.craft-art.jp/
目次
実はいいコトたくさん!旗竿地のメリット
旗竿地は道路に接する出入り口部分(間口)の幅が狭く、細長く伸びた路地のようなスペースの先にまとまった敷地がある形状をしています。間口が広い一般的な四角形の土地と比べて割安であることが多い反面、その形状から住まいづくりが難しそうと購入を迷う方も多いですが、実は旗竿地ならではのメリットもたくさん!まずは、どのようなメリットがあるかをご紹介しましょう。
静かな環境で生活しやすい
道路沿いに建つ家に比べて、旗竿地に建てた家は道路から奥まった場所にあるため、車や通行人が家のすぐ前を通ることがありません。通行人の話し声や車の走行音の影響を受けにくくなるので、静かな環境で暮らすことができます。
道路から距離があるため、安心して暮らせる
玄関が道路から離れているので、道路沿いの事故に巻き込まれる危険性を減らせます。特に小さな子どもがいるご家庭では、子どもが玄関から飛び出したとしても敷地内であるため安心。また、玄関ドアを開けても家の中が通りから見えにくいといったプライバシー面のメリットも挙げられます。
路地部分を活かしたプランニングが可能
敷地の入り口から玄関までの路地部分は、その家ならではの演出ができる絶好のスペース。照明や植栽などを上手に加えながら演出効果を高めることで、まるで旅館やホテルのアプローチのようなドラマチックな空間にすることもできます。
もちろん、特殊な形状だからこそのデメリットもあります。たとえば、路地部分が長いため道路側にポストを設置すると玄関ドアからポストまでの距離が遠くなったり、反対に建物側に設置すると敷地の出入り口部分からポストの距離が遠くなったり。また、駐車スペースが限定されることも。そこで、旗竿地を選ぶ前に考慮しておきたいポイントをお教えします!
旗竿地を選ぶ前に
チェックしておきたいポイント
日当たりと風通しを確保できているか
周囲を建物で囲まれていることも多い旗竿地は、日当たりや風通しが悪くなるケースもあります。旗竿地に家を建てるときは、日当たりと風通しを確保できる建築プランになっているか確認しましょう。
周囲の建物から圧迫感を受ける場合は、中庭のある住宅をつくることで、日当たりや風通しを確保することができます。旗竿地では建築プランや間取りが非常に大切になるので、建築士の方にしっかりと相談しておくと安心です。
周囲の建物の様子もチェック!
敷地の広さや通風・採光の状況だけでなく、敷地から見える景色も重要なポイント。建物に囲まれた旗竿地では、周囲の建物の裏側に設置された室外機や雨樋などがどうしても目についてしまうことがあります。
特に路地部分は両側が各住戸の裏側になっていることが多く、通る際に室外機や雨樋が気になるといった声もよくお聞きします。見栄えを高めたい場合は、フェンスや塀などの設置も検討する必要がありますね。
駐車スペースに必要な台数や駐車方法
旗竿地は路地部分に十分な広さがあれば、2~3台分の駐車スペースを取ることが可能です。しかし、基本的に縦列駐車になるため車の移動や入れ替えなど、出し入れに手間が発生することも。
路地部分に駐車スペースを設ける際は、必要な駐車台数や利用頻度、駐車スペースの位置を事前にシミュレーションして検討することが大切です。
目の前の道路幅も、駐車のしやすさに影響するので注意が必要です。ただし、旗竿地にとって貴重な路地部分の敷地を駐車スペースだけに使うのではなく、住まいの世界観をつくる外構という観点で見ることをおすすめしたいですね。
施工事例で見る、
旗竿地を活用した
プロのアイデア4選
では実際に、旗竿地の路地部分を使ってどのように住まいの世界観をつくっていくのか、具体的に事例でご紹介しましょう。
【IDEA1】周辺環境に合わせてプランする
旗竿地の路地は、どうしてもお隣の壁や敷地を分けるフェンスなどが目につきます。また敷地境界線によっては、通路部分がクランク形状になるケースもあるため、これらの条件をあえて利用するという発想も必要です。
たとえば、このプランでは入り組んだクランク部分を利用して植え込みをつくり、あえて通路を狭くすることで植栽を眺めながら歩ける小径のような演出を施しています。
また、状況によっては、お隣の所有物であるフェンスをあえて利用し空間全体の色調を統一したりと、借景のように周囲の環境を利用することも1つの手です。目につくものがあるときは高めの樹木を置けば、雰囲気良く隠すこともできます。
【IDEA2】照明や植栽で奥行き感を演出する
縦長の路地は、敷地の入り口から玄関までの距離が遠くなる分、奥行き感を活かすことで印象を高めることができます。植栽や機能門柱などをアイキャッチにして、通路には石畳のような床材やリズミカルな照明を足元に配置することで、まるで高級旅館のようなアプローチに。
ただ出入りに使うだけの通路や駐車スペースではなく、ヨーロッパのおしゃれな路地のように演出したり、テーマパークのアトラクションへ向かう入口のように気分を高揚させる演出も工夫次第でできるのが旗竿地の路地部分の魅力です。
こちらは3台分停められる駐車スペースをあえて2台分に削り、玄関ドアの前のスペースに演出を施すことで、印象を高めています。床材も2種類を使い分け、照明が路地をやさしく照らすことでゆったりと玄関へといざなう、付加価値の高い外構に仕上げています。
【IDEA3】エクステリアアイテムを上手に使う
間口の幅が狭く縦に長い路地になっている旗竿地は、カーポートや機能門柱などのエクステリアアイテムを設置しようとすると、基本的に縦に並べて配置することになります。その際にさまざまな色味やサイズ感のアイテムを並べると、スムーズな動線だけでなく見た目のバランスも損なわれがち。
カーポートを設置するなら、なるべくミニマルなデザインのものを選んでスリムな形状の機能門柱と合わせたり、フェンスの色調とも統一したりすると、外構空間にまとまりが生まれます。
ゲストが訪れた際に、まずどこに目が行くのかということを考えながらプランを考えるのがコツ。主役となるポストや植栽を中心に、建物の雰囲気を邪魔しないように、外壁やフェンスとも配色を揃えてエクステリアアイテムを選ぶのがおすすめです。
【IDEA4】路地を分けて小さな庭をつくる
縦に長い路地部分を活かして、道路側を駐車スペース、建物側を庭として空間を分けてみるのはいかがでしょう。旗竿地でありながら庭のある暮らしを楽しむこともできます。窓からの景色も緑豊かになり、季節の良い時期は小さなベンチを置いてくつろぐこともできます。
路地部分にあえて門扉をつくってスペースを完全に区切ってあげると専用庭のような空間もつくれます。帰宅した際にアプローチだけでなく、あえて庭を通って家に入っていくという演出も楽しいですね。
LIXILのエクステリアアイテムで
旗竿地の外構をもっと魅力的に!
LIXILでは、旗竿地をスタイリッシュに演出するエクステリアアイテムが豊富に用意されているので、外構づくりの際はぜひ取り入れてみましょう。ここでは、旗竿地におすすめのエクステリアアイテムをご紹介します。
スタイリッシュに決まる「カーポートSC」
ノイズレスなフォルムが特長の「カーポートSC」は、旗竿地の外構をスタイリッシュでかっこいい印象に仕上げることが可能です。落ち着きのあるマットな質感のカラー3色のほかにも木調色、ツートンカラーのコーディネートなど、カラーバリエーションも豊富にご用意しているので、周辺環境に合わせてお選びいただけます。
旗竿地の路地部分は狭いからこそ、どのようなエクステリアアイテムを設置するのかが重要。カーポートSCはスタイリッシュなデザインで、自宅や隣家の外観と合わせて一体感のある印象に仕上げることができます。
個性と調和を両立させる「機能門柱FS」
温かみのあるデザインで、玄関まわりを演出してくれる「機能門柱FS」。インターホンやサイン、ポストがひとまとめになっているので、限られたスペースで活用しやすいエクステリアアイテムです。フレームやセンターブロック、ポストの色を自由に組み合わせてつくる機能門柱FSは、周囲との調和を図りながら、お好みのデザインにこだわることもできます。
機能門柱FSはデザインバリエーションが充実しています。色の組み合わせを考えるときは、カーポートやフェンスと同色系のカラーを選ぶと、より洗練された空間を実現できるのでおすすめです。
軽やかに境界を仕切る「フェンスAL」
「フェンスAL」は、しっかりとした仕切りや目隠しが必要ない場所で、さりげなくおしゃれに隣家との境界を主張したいときにおすすめ。たとえば、隣家と接する路地部分の出入り口に置くと、景観を損なうことなく自然に仕切ることができます。
旗竿地の路地部分から玄関ドアまでをつなぐように設置すると、玄関アプローチに一体感が生まれます。周囲よりも低いフレームが、来訪者を誘導するさりげないサインになります。
スペースの限られた旗竿地もちょっとした工夫次第で、すてきな外構をつくることができます。メリットも豊富な旗竿地で、新しい住まいづくりを始めてみませんか?