【建築家が解説】
バリアフリー配慮のリフォームで、
人生100年時代を快適にする
庭づくり
様々な希望を叶えて建てたお家でも、住んでいればあれこれ出てくるお悩みや困りごと。そんな住まいのエクステリアのお悩みや、毎日の暮らしがちょっと良くなる「いいコト」をご紹介するこのシリーズ。
ナビゲートするのは、築5年の戸建てに住む主婦の陸田知美(りくたともみ)さん。周りの人からはシルミさんと呼ばれています。情報収集に熱心で、時にはご近所さんのお悩みまで解決してしまうしっかり者。さて、今回のテーマは?
ねぇ、シルミさんのご両親ってバリアフリーリフォームをしたことある?
実家は階段に手すりを付けたり、内窓で断熱性を高めるリフォームをしたわ。玄関前も手すりを付けていたわね。どうして?
同居中の母はガーデニングが趣味なんだけど、最近、庭に出るのが大変そうなのよね。何か良い方法がないか探しているの。
そうだったのね!わたしも将来のことを考えてバリアフリーリフォームが気になっていたから、ちょっと調べてみるわ!
目次
人生100年時代を豊かで快適にする
庭の活用アイデア
平均寿命が100年に近づく現代社会において、住み慣れたわが家を快適に整え、より長く充実した生活を送れるようにしたいもの。それには、建物のメンテナンスだけでなく、「庭」を上手に活用することも大切です。そんな暮らしやすさと楽しさを両立させる庭の活用アイデアをご紹介します。
洗濯動線の短縮で家事ラクに
洗い上がりの重い衣類を持ち運ぶ洗濯は、ご高齢の方が負担を感じやすい家事のひとつ。特に1階に洗濯機を置いて2階に物干しスペースがある場合、重い洗濯物を持って階段を上り下りしなくてはなりません。
庭に物干しスペースがあると家事動線を短縮でき、階段の踏み外しなど、もしもの事故も防げるので安心です。
親子3世代の交流の場にも
子どもが巣立って夫婦二人の暮らしになったとき、休日に孫や子どもたちが遊びに来てくれると嬉しいもの。食事を楽しんだり、孫がビニールプールで遊んだり、親子3世代で楽しめる庭があると離れて暮らす家族も自然と集まりやすくなり、親子の絆をぐっと深めることができます。
ペットの遊び場として
子どもの独立などをきっかけに、新しい家族としてペットを迎える方も少なくありません。庭はペットを遊ばせるスペースとしても活用できます。なかでも犬を迎えたい方は、周囲を壁やフェンスなどで囲んだ庭にすると、脱走の心配も少なく安心して遊ばせることができます。
自然と触れ合えるスペースに
自宅で過ごす時間が増える中で、庭は気軽に自然や季節を楽しむことができるスペース。その中で、特に注目したいのが「園芸療法*」の効果です。
ガーデニングや家庭菜園を通して自然と触れ合うことはストレス軽減につながり、体を動かすことから適度な運動にもなります。また、植物の成長を家族と共有したりすることでコミュニケーションが生まれ、心身の健康だけでなく社会的健康の増進にも期待できます。
(出典)日本園芸療法学会 https://www.jht-assc.jp/horticulture/
へぇ~!植物の力ってすごいのね!なおさら、母にはガーデニングを長く楽しんでほしいな…。 どんなバリアフリーリフォームがいいかしら?
じゃあ、知り合いの建築家さんに詳しく聞いてみる?
建築家が解説!
庭まわりのバリアフリーリフォームの
ポイント
シルミさんと友人は、「設計事務所アーキプレイス」の石井正博さんと近藤民子さんにお話を伺いに行きました。
PROFILE
石井正博さん 近藤民子さん
一級建築士。男女双方の視点から、敷地の特性と建て主のライフスタイルを活かし、バランスのとれた家づくりを心がける。
こんにちは!石井さん、近藤さん。さっそくですが、今日は庭のバリアフリーリフォームについてお伺いしたいです。
よろしくお願いします。実家の庭のバリアフリーリフォームを考えているのですが、何かポイントってありますか?
まずは、ウッドデッキを活用して室内からスムーズに出入りできる庭にするのはいかがでしょう。
ウッドデッキ+階段で出入りしやすい庭に
一般的に日本の住宅は、室内の床と地面に50~60cmほどの段差があります。ご高齢の方にとって、この段差を行き来するのはなかなか大変。ウッドデッキと階段で、より出入りしやすい庭にできます。
ウッドデッキを室内の床に近い高さで設置すると、庭へ出るためのハードルを下げる効果も期待できます。さらにデッキから庭に続く階段をゆるやかに設けることで、上り下りの負担も減らせます。
階段を設けたら、転倒防止対策を施すと安心。段差のあるところだけ滑り止めのラインが入ったデッキにすると、段差を認識しやすくなり、つまずき防止につながります。
将来まで長く庭を活用したい場合は、スロープや手すりを設置するのも良いですね。
手すりの設置や段差を解消するリフォームは、国や自治体から補助金を受けられるケースもあるから、一度確認しておくと良いわよ!
お得にリフォームするためにも見ておくわ!
石井さん、ほかにもデッキを設置するときのポイントはありますか?
メンテナンス性を考慮したウッドデッキを選ぶことですね。天然木デッキのメンテナンスは、本人が行う場合は負担の大きい作業になるので、お手入れが簡単な人工木デッキがおすすめです。
また、ウッドデッキの下が土の場合、時間が経つと雑草が生えてくることも。デッキの下の草むしりは大変なので、設置するときに雑草対策も考えておきましょう。たとえばデッキの下を土間コンクリートにすれば、雑草が生える心配がなく、お手入れの負担が減らせます。
デッキの下のことまでは考えていなかったわ。長く活用するためには、メンテナンスのしやすさは大切よね。特に誰がどうやって管理するのかは、家族でしっかり考えておかないと!
あとは、夏場の暑さや冬場の寒さ対策を整えて、季節を問わずみんなが快適に過ごせる庭にするのも良いですね。
夏や冬も庭で快適に過ごせる工夫を
室内のリフォームでは、断熱性能を上げることで夏は涼しく、冬は暖かい、快適な住まいに変えられます。庭も暑さ寒さに対する工夫で、より快適に過ごせる場所にすることができます。
たとえば、夏場でも庭で過ごしたい方は、日差し対策は欠かせません。特に南向きの庭は日当りが良い一方で、夏は暑くて庭を活用できないことが多くなります。日よけの庇(ひさし)やオーニングを設置して、影になるスペースをつくりましょう。
冬場はブランケットやラグなど暖を取れるアイテムを用意すると、少し寒い時期でも庭で過ごしやすくなるのでおすすめです。
デッキに温かい料理を持ち出して家族と食事を楽しむのもアリよね!
そうね、子どもも一緒に楽しめそう!それに過ごしやすいデッキがあると、近隣の方とちょっとおしゃべりするときに、腰掛けられるスペースになるのもいいわね。出入りや過ごしやすくする工夫以外にも、何か考えておくことはありますか?
将来、家族が外出しにくい状態になったとき、庭は身近に自然を感じられる場所になるので、室内から楽しめる景色づくりは注力したいところです。
室内から景色を楽しむ照明計画のコツ
庭づくりで照明を設置するときは、室内と庭の明るさのバランスが大切です。室内が明るすぎると窓ガラスに照明が映り込み、お部屋から庭が見えにくくなるケースもあります。
夜間に庭をきれいに眺めるためには、室内側の照明選びがポイントになります。おすすめは、明るさを段階的にコントロールできる調光機能付きの照明。庭はメリハリをつけて明るく照らしつつ、室内は調光機能で適度に明るさを落とすことで、心地よい夜の景色をつくることができます。
照明は庭だけじゃなくて、室内側の明るさも考慮する方が良いのですね。
そうですね。室内からの見え方を意識することで、より暮らしを豊かに彩ることができます。
ちょっとした場所にある屋根で、
作業のしやすさがアップ!
バリアフリーリフォームというと、どうしても段差解消や手すりの設置など足もとに注目しがちですが、上に目を向けることもアイデアのひとつです。
たとえば、勝手口から続くスペースに洗濯機を置いたり、犬用の洗い場などを設ける方もいらっしゃいますよね。そんなとき、その作業スペースの上に屋根を設置することで、雨の日でも作業しやすい空間になります。
なるほど・・・!たしかに、ちょっとした場所にも屋根があると、庭や外への出入りがよりスムーズになりますね。
とても勉強になりました!家に帰ったら、さっそく家族に共有してみます。特にウッドデッキはぜひ設置したいので、おすすめを教えていただけますか?
そうですね…。LIXILの人工木デッキ「樹ら楽ステージ」は、ライフスタイルや敷地条件に合わせてさまざまな施工に対応できるのでバリアフリーリフォームにおすすめです。
バリアフリー配慮の庭におすすめ!
設置対応力の高い「樹ら楽ステージ」
庭の形状や広さに合わせて設置できる人工木デッキ「樹ら楽ステージ」。デッキから庭に続く安全性の高いスロープと手すりを設けることも可能です。
ご高齢の方はもちろん、車いすを使用する方や小さなお子さまなど、家族みんなが使いやすい庭づくりを目指す方におすすめです。
段差やスロープ部分は照明を合わせることもできるので、視認性が高まり、つまずき防止に役立ちます。照明は歩行の安全性を高めるだけでなく、庭を幻想的な空間に演出するアイテムとしても活躍します。
人生100年時代と言われる今、愛着のある住まいでより長く、心地良く暮らすために、室内だけでなく、庭も含めたバリアフリーリフォームを考えてみませんか。