エクステリアの匠に聞きました!シンボルツリーのトレンドや植え方のコツ
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エクステリアの匠に聞きました!
シンボルツリーの
トレンドや植え方のコツ

玄関まわりやお庭に植えることで、住まいの象徴となるシンボルツリー。自宅にも植えたいけれど、どんな種類があるのだろう、どこに植えると良いのか分からない。そんなお悩みもあるのではないでしょうか。そこでエクステリアの匠こと「エクスプランニング」の古橋宜昌さんにお話を伺いました。トレンドのシンボルツリーや植え方のポイントなど役立つ情報が満載です。

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お話を伺うのは、エクステリア商品で困りごとを解決するシリーズでおなじみのシルミさんです!

こんにちは、古橋先生!本日はお時間いただき、ありがとうございます。
早速ですが、今日はシンボルツリーについてお話を聞かせてください。

では、最初にシンボルツリーを植える理由からお話しましょう。

シンボルツリーを植える意外な理由とは?

多くのエクステリア商品は、地面から約1.5mの高さであることがほとんど。例えば、ポストや表札・インターホンを取り付ける門袖と呼ばれる壁は、約1.4m~1.5mの高さと言われています。

一方、標準的な家の建物の高さは1階分が約3m。基礎部分を約40cmと考えると、1階だけで地面から約3.4mの高さです。2階建てなら6.4m、3階建てなら9.4mと高さが上がり、さらに、建物の上には屋根も設置されます。すると、建物の高さに対してエクステリアの高さが圧倒的に低くなってしまい、見た目のバランスが悪くなってしまいます。

シンボルツリーを植える意外な理由とは?

そんなときに、エクステリアと建物の高低差を補うものとしてシンボルツリーが役立ちます。低いエクステリアと高い建物の間にシンボルツリーを植えることで、外観のバランスをなじませることができます。これがシンボルツリーをおすすめする理由のひとつです。

シンボルツリーを植える

シンボルツリーでエクステリアと建物の高さのバランスを取る…。そういった理由があったんですね。ほかにはどういった理由があるのでしょうか?

もうひとつは、室内から外を見たときの景色です。

最近は、2階や3階にリビングダイニングをつくる住まいも多くなっています。なかでも1階に日差しが入りにくい都市部の住宅密集地などは、2階・3階にリビングダイニングを設けることで日当りの良い空間をつくることが可能です。
しかし、2階や3階のリビングダイニングは室内から窓の外を見たときの景色が、近隣の家の屋根やマンションが見えるだけ…ということも。そこで、窓先にシンボルツリーの葉が風で動いている様子がチラッと見えるだけでも、景色の良さが変わってきます。

1階にリビングがある場合も、お子さまのいるご家庭だと2階に子ども部屋をつくるケースが多いですよね。お子さまが部屋で勉強中に外を眺めたとき、窓先からシンボルツリーの葉が見えると部屋の心地良さが変わると思います。

たしかに、窓から緑の葉が見えるとホッとします!では、実際にシンボルツリーを選ぶときのポイントを教えてください。

まずは、やはり「高さ」ですね。できるだけ建物とエクステリアの中間を補う高さのシンボルツリーを選んでください。あとは「季節感」と「透け感」も大事にしていただきたいポイントです。

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シンボルツリーを選ぶときは

高さと季節感・透け感を意識しよう

樹は大きく常緑樹と落葉樹に分けられます。常緑樹とは1年を通して葉が付いている樹で、落葉樹は秋から冬にかけて葉を全て落とす樹のことです。
常緑樹は樹の形が1年中ほとんど変わらず、しかも葉が肉厚で色が濃くなります。そのため、狭いところに植えると全体的に重く、少し圧迫感のある印象になってしまうこともあります。

例えば、常緑樹のキンモクセイやヤマモモは、いつも葉がどっさりと付いているイメージはありませんか?

たしかに、たくさん葉が密集しているイメージです。

キンモクセイ
キンモクセイ
ヤマモモ
ヤマモモ

一方、落葉樹は1年で葉を入れ替えるので、葉自体があまり肉厚にならず、空間に透け感を演出できます。枝や葉っぱの間から向こうが少し透けて見え、風通しを良くする効果が期待できます。

シンボルツリー

私はシンボルツリーを玄関先か門まわりの近くに植えることが多いのですが、せっかく日本には四季があるので季節感を楽しんでいただくために、よく落葉樹をおすすめしています。お子さまがいるご家庭なら情操教育の一環として、花が咲いている、実がなったなど季節を感じてもらいたいですね。

子どもと季節を楽しみたい気持ちはあるのですが、正直、葉が落ちる落葉樹はお掃除が大変そうで…。

葉のお掃除を心配される方は多いですね。しかし、常緑樹も新しい葉が出てくれば、古い葉は落ちていきます。年間を通して少しずつ葉を入れ替えているので、なかには常緑樹と年間に葉が落ちる量があまり変わらない落葉樹もあります。

常緑樹も落葉樹もあまりお手入れの手間が変わらないなら、自宅にも何か植えてみたいかも!参考にしたいので、最近のシンボルツリーのトレンドやおすすめがあれば教えてください。

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選ぶ前に知っておきたい!

シンボルツリーのトレンド4選

シンボルツリーとして長年人気のシマトネリコ

最初におすすめする樹は、最近10~15年でシンボルツリーとして人気のシマトネリコです。高い人気の理由は、常緑樹でありながらも見た目は落葉樹のように透け感を感じさせる点です。植えても重い印象にならずに、1年中、葉が付いているためいつでもグリーンを楽しむことができます。
しかし、シマトネリコは成長が早いため、狭い玄関先や門まわりに植える際には注意が必要です。剪定をせずにそのまま放置していると5年後・10年後には、かなり大きく成長します。気が付いたときにはシマトネリコが巨大化して最終的に切ってしまう、という話も多いそうです。植え付け後は年に1度、できれば2度、植木屋さんに連絡してハサミを入れてもらいながらコントロールした方が良いでしょう。

常緑樹で透け感もある…良いとこ取りですね!ちなみに、シマトネリコのように透け感のある見た目で、成長もそこまで早くない樹はあるんでしょうか?

ハイノキという樹がシマトネリコのように透け感がありながら、常緑樹で1年中葉を付けているので人気が高くなっていますね。

常緑樹で管理も簡単。注目度が高まるハイノキ

常緑樹で管理も簡単。注目度が高まるハイノキ

ハイノキはシマトネリコに比べて成長がゆっくりのため管理がしやすいことから、ここ最近シンボルツリーとして注目されています。
ただし、ハイノキを植える際は日差しに注意してください。特に西日が強く当たる場所に植えてしまうと葉が焼けて茶色くなってしまう可能性があるので、午前や午後の数時間だけ日が当たる半日陰のような場所に植えるのがおすすめです。


ほかにも、建物の外壁が白い場合、外壁の近くにハイノキを植えると壁に反射した太陽の光で葉が焼けたり、駐車場のコンクリートが近くにあると照り返しで葉焼けを起こす可能性もあります。またハイノキは根が浅いため、乾燥に弱い点も配慮しましょう。しっかり根付くまではこまめに水やりをしたり、根もとに土の乾燥を防ぐ下草を植えたり、土が乾きにくくなる工夫をしておくと安心です。

シマトネリコのような見た目で管理も簡単なのはうれしいですね。ちなみに、古橋先生は普段どのような樹をおすすめしていますか?

最近では、アオダモという樹を積極的にお客さまにおすすめしています。全国的にも人気が高いシンボルツリーです。

バットの材料にも使われる落葉樹アオダモ

バットの材料にも使われる落葉樹アオダモ

アオダモは冬に葉を落とす落葉樹ですが、人気のシンボルツリーです。非常に堅く強度があるアオダモの樹は、野球で使用されるバットの材料としても有名です。バットの太さになるまでは約70年かかると言われるほど成長が遅く、維持管理が比較的ラクな樹でもあります。

アオダモのような落葉樹は幹の細い樹が多いため、幹を1本だけ植えると少し物足りない印象になりがちです。落葉樹をシンボルツリーとして植えたい、と言う場合は根本から3本、5本、7本など複数の幹が出ている株立ちと呼ばれる仕立ての樹を選ぶことがほとんど。幹が1本の樹に比べて複数出ているとボリュームを出すことができるので、アオダモをシンボルツリーとして植えるのであれば、株立ち仕立てを選ぶと良いですよ。また、アオダモがおすすめの理由は、成長してくると樹の上の方で枝や葉が広がり、下の方からはあまり枝が出なくなる点です。

なぜ、樹の下の方から枝や葉が出ないことが良いのでしょうか?

例えば、狭いスペースにシンボルツリーを植える際、あまり大きい樹だと通りにくくなるから、と自分の身長に近い高さの樹を入れる方がいらっしゃいます。しかし、身長と同じくらいの高さでは通るときに葉が当たりますし、枝が横に広がると通路が狭くなってしまいますよね。

たしかに!私も狭いところには小さい樹が良いと思っていました。

これを逆の発想で、狭いところにはアオダモのように幹の下の方から枝が出にくく、身長よりも高い位置で葉が広がる樹を選ぶのです。すると通路が通りやすく、緑のトンネルのような爽やかな空間をつくれます。落葉樹なので、季節感や透け感も味わえますよ。

風格のある空間を生み出すシャラの樹・ヒメシャラ

風格のある空間を生み出すシャラの樹・ヒメシャラ

古くから日本の庭でもよく植えられているシャラの木。別名「夏椿」とも呼ばれ、実際にツバキに似た白い花が付きます。シャラの樹の良いところは、枝が横に広がらずに上にスッと伸びること。狭いところに植えてもあまり通路を妨げません。風格を感じられる樹のため、上品なイメージの空間をつくりたい場合にぴったりです。

また、ヒメシャラという落葉樹も人気が出ています。ヒメシャラの特長は少し赤みを帯びてツルツルとした幹。冬に葉が落ちて幹だけの姿になってもきれいなので、1年を通して美しい景色を楽しめます。

紅葉を楽しみたい方は、楓の仲間でコハウチワカエデという樹が秋に葉が赤くなるので、玄関やお庭のポイントとして入れる方も多いですね。

たくさん教えていただき、ありがとうございます。どれを植えようか迷っちゃいますね。

植える樹の種類は大切ですが、同じくらい樹をどこに植えるのか、ということも重要なポイントです。

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玄関まわりは奥行きを意識した

シンボルツリーの配置を

道路から建物や玄関までの距離が近い狭小地であれば、できるだけ奥行きがある空間に見せることが大切です。このときに大事なのが、道路から玄関を見たときに玄関が丸見えになっているのか、それとも玄関の手前にシンボルツリーが1本あるのか、という点です。

それはどういうことでしょうか?

例えば、和室から小さな坪庭を眺めているシーンを想像してください。

和室にある窓の横から少し枝や葉が見えているくらいの位置に樹を植えます。すると、室内から小さな坪庭を見たとき、本当は狭いものの、枝や葉が窓から見えることで庭の奥行きが深く感じられるようになります。こうした樹は「障りの樹」と呼ばれ、日本庭園でよく使われる技法です。

和室にある窓

同様に玄関まわりでもシンボルツリーを障りの樹として上手に使うと、印象が大きく変わります。落葉樹を玄関の正面ではなく、道路から見て枝や葉が少し玄関に掛かって見える位置に植えると圧迫感がない、すっきりとした外観を演出できます。

玄関まわりのシンボルツリー

樹の植え方ひとつで奥行きを感じられる玄関をつくれるんですね。では、お庭に樹を植える場合も何かポイントはありますか?

そうですね、お庭も樹を植える場所を重視していただきたいです。

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大きな1本のシンボルツリーで

使いやすく快適なお庭に

お庭に樹を植えるとなったときに多いのが、隣家との境界に並べたり、道路との境界に並べたり、できるだけ自宅の庭スペースを広くしようとする方法です。しかし、周囲を樹で囲んでしまうことで圧迫感で逆にお庭が狭く見えることもあります。それならば、お庭の真ん中にシンボルツリーを植えたり、お庭に設けたデッキの先に大きな樹を1本植えてみましょう。室内から隣家や道路までの間に樹が1本入ると、ちょっとした目隠しとして役立ちます。また、デッキのすぐ横に大きな樹があると、日中は木陰ができるので過ごしやすい場所になります。

大きな1本のシンボルツリーで使いやすく快適なお庭に

玄関まわりもお庭も、シンボルツリーの植え方のコツがいろいろあるんですね。ちなみに、LIXILさんの商品とシンボルツリーを合わせるときに何かおすすめの商品やプランのコツはあるのでしょうか?

プラスGシリーズは、高さが地面から約2.4mもあるため、高さを活かしたプランがおすすめですね。

幻想的な空間に仕上がる
プラスGとエクステリア照明

例えば、シンボルツリーを植えない場合、エクステリアと建物の高さのバランスを補うために、プラスGのアーチファンクションやパネルファンクションが活躍します。フレームの近くにシンボルツリーを加えると、より効果的でおすすめです。

アーチファンクション
アーチファンクション
パネルファンクション
パネルファンクション

プラスGにシンボルツリーを合わせるときは、フレームよりも少し上の高さに合わせると美しい玄関ができあがります。プラスGの商品は縦のラインを強調するので、アーチやパネルに葉が掛かるよう少し手前に植えると、やわらかい印象を与えることができます。

プラスGにシンボルツリーを合わせる

また、エクステリアライト「美彩」のスポットライトもプランに合わせたい商品。シンボルツリーを美彩で下からライトアップすると、夜間はドラマチックなシーンをつくることが可能です。
その際、下から上に向かう光だけではなく、プラスGのアーチやフレームを使ってダウンライトを取り付けてみましょう。スポットライトで下から上に向かう明かりと、ダウンライトによる上から下に落ちる明かりで、空間を立体的に見せることができます。

エクステリアライト「美彩」

シンボルツリーにプラスGの商品と照明を合わせると本当に美しく仕上がるので、ぜひおすすめしたいアイデアですね。

ほかにもいろいろプランを見たいのですが、何か良い参考はありますか?

LIXILさんが毎年開催している「エクステリアコンテスト」の受賞作品が掲載されている「exterior design collection」の事例はどれも家づくりの参考になると思います。限られた敷地の中でも、すばらしいデザインなどこだわりが見つかるので、気に入ったアイデアを取り入れていただくと良いかと思います。

素敵な事例がたくさんありますね!わが家もリフォームしたくなってきました。今日は、いろいろと役立つお話をありがとうございました。