【建築家直伝!】パッシブデザイン住宅におすすめの外構アイデア
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【建築家直伝!】
パッシブデザイン住宅に
おすすめの外構アイデア

自然の力を最大限に活用してつくる「パッシブデザイン」の住まい。近年、健康や環境にやさしい家づくりを求める方を中心に注目が集まっています。今回は、パッシブデザインの設計や講師として活躍されている建築家の木村真二さんに、パッシブデザイン住宅におすすめの外構や庭づくりのアイデアをお聞きしました。

PROFILE

木村 真二

株式会社 PASSIVE DESIGN COME HOME
代表取締役/一級建築士

パッシブデザインを自社で設計施工する傍ら、全国32社のパッシブデザイン工務店のコンサルティング、大学・企業への講演、YouTube動画の配信などを手掛けている。

https://passivecomehome.co.jp/

そもそも、パッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、できるだけエアコンや床暖房などの住宅設備に頼らず、太陽の光や熱、風といった自然のエネルギーを利用して、一年中快適な住まいを目指す設計思想・設計手法のこと。パッシブデザインで設計された住まいのことをパッシブデザイン住宅やパッシブデザインハウスと呼びます。

パッシブデザイン住宅のメリット

自然エネルギーを活かして生活するため、エアコンや照明の使用頻度が低く、光熱費を抑えることができます。さらに、朝晩の気温差や季節の移り変わりによる室内の温度差を減らすため、身体的な負担を軽減できることもメリットのひとつ。夏は涼しく、冬は暖かい、健康的で快適な住まいを実現することができます。

パッシブデザインの5つの要素

1. 断熱

断熱材やサッシの仕様等により高い断熱性能を確保することで建物全体を一定の温度に保ち、夏は涼しく、冬は暖かい室内をつくります。

2. 日射取得

寒い冬に温かい太陽熱をたくさん室内に採り込み、室内の温度を高めます。

3. 日射遮蔽

暑い夏に窓から入ってくる太陽熱を遮り、室温の上昇を抑えます。

4. 自然風

自然風を利用して涼しい空気を採り込み、建物内にたまった熱い空気を外に逃がします。

5. 昼光利用

自然光を室内に採り込み、照明をつけなくても生活できる明るさを確保します。

パッシブデザインに大切なこれら5つの要素は、建物の設計で考えられることが多いですが、外構でも配慮すべき点がいくつもあります。優れたパッシブデザインの住まいを実現するために知っておきたいポイントを、実際に私が手掛けた住まいの事例と一緒に見ていきましょう。

外構や庭も含めて
パッシブデザインを考えることが大事

家を建てるときによくあるのが、建物の設計を先に考えて、外構はあとから別の会社に依頼するという進め方。パッシブデザインの場合、季節ごとの日当たりや風通しを細かく考慮して設計するため、外構の設計や選ぶ設備によっては、建物の設計に影響を及ぼす場合があります。

たとえば、日の光を採り入れるために設置された窓に、あとから設置された大型のカーポートの影がかかり、期待通りの日射が得られないというケース。せっかく選んだエクステリアアイテムが建物側に影響を与えないよう、外構計画も含めてパッシブデザインを計画することが大切です。

外構や庭も含めて パッシブデザインを考えることが大事

パッシブデザインを考えた
プロの外構設計アイデア

室内と外をつなげる南の大開口窓

大開口窓とはリビングから庭やデッキ、テラスにつながる開口部の面積が大きい窓のこと。このパッシブデザイン住宅では、大開口窓を南に設けて外とのつながりをつくりながら日射を室内にたっぷり採り込み、冬でも暖かい住まいを実現しています。

さらに窓の面積が大きい分、室内にいながら外に広がる美しい庭や豊かな自然の景色をダイナミックに楽しむことができるのも嬉しいポイントです。

室内と外をつなげる南の大開口窓

眺めるだけでなく、庭やバルコニーを活用したい方は室内から外に出やすいような工夫をしましょう。デッキやタイルを設置するのであれば、室内と段差のないフラットサッシを使うとアウトドア空間を楽しみやすくできます。さらに室内の床色と同色系のデッキ材を設置することで、内と外との一体感が増し、空間に広がりを感じられます。

風を通すフェンス設置のコツ

大開口窓を設けると日射をたっぷり採り込める一方、周囲からの視線が気になることも。安心して暮らすためには、フェンスなどを上手に設置してプライバシーを確保することも大切です。

しかし、室内に自然風が通り抜けることもパッシブデザインの基本。フェンスなどで外構をつくるときは、できるだけ風を妨げないような工夫が必要です。

たとえば、フェンスを設置するときに下の方に少しすき間を開けることで、外からの視線を遮りながらも風を通すことができます。さらにフェンスのすき間の近くに水場を設けると吹き込む風が水で冷やされるので、涼しい風を室内に採り込めます。

また、風が通るように設計されたスリット状のフェンスもパッシブデザインにぴったり。スリットの角度が変わるタイプなら、風を通しながら時間帯によって日射を遮ったり、室内に採り込んだりできるので快適な室内環境を実現できます。

緑化計画やエクステリアアイテムで
日射をカット

庭に植えた樹木は夏の強い日差しを遮るため、パッシブデザインで非常に重要な役割を果たします。樹木は1年を通して葉が付いている常緑樹よりも、夏に葉が生い茂り、冬に葉が落ちる落葉樹がおすすめ。夏は緑のカーテンが日射を遮り、冬は葉が落ちるので室内まで日差しを採り込むことができます。

緑化計画やエクステリアアイテムで日射をカット

樹木は、どこに樹を植えると外観が美しく見えるのか、どのように樹を眺めながら家に入るのかなど、植栽計画にもこだわりたいところ。映画を見て感動するように、ドラマチックな体験ができる外構にしましょう。敷地の入口から玄関ドアまでのアプローチの中で、樹木を目立たせたり、あえて正面から見えない位置に配置したり、家に入るまで外構を楽しめるような配置にすると、暮らしにゆとりが生まれます。

また最近は、日当りを考慮して2階にLDKをつくる方も増えてきました。リビングから続くバルコニーをどのように活用したいのか、ライフスタイルも合わせて住まいをイメージすると、ご家族に最適なパッシブデザインを設計できます。

たとえば、バルコニーを子どもがプールなどで遊べる空間にしたいときは、タープやシェードを地面に対して水平に設置することで、日射と近隣からの視線を遮りながら楽しむ空間をつくれます。真下に下ろすタイプのシェードでは室内から外が見えませんが、水平に設置できるタイプであれば、バルコニーにいる家族の様子が見えるのでおすすめです。

パッシブデザインに
有効なサンルーム

窓から太陽光をたっぷり取り込めるサンルームは、パッシブデザインに有効です。日中、サンルーム内で温められた空気を、室内側の窓を開けることでリビングに取り込めるため、冬場における室内の快適性が高まります。

パッシブデザインに有効なサンルーム
パッシブデザインに有効なサンルーム

さらに、サンルームは天候を気にせずに洗濯物を干せる空間として毎日の家事をラクにしてくれます。サンルームに干した洗濯物の湿気を利用すると、暖房の使用などによる空気の過乾燥を軽減できるので一石二鳥です。

リフォームでもパッシブデザインにできる?

リフォームでパッシブデザインを取り入れたい場合、建物を2重窓にしたり、既存のアルミサッシの上に樹脂窓を取り付けるカバー工法などで断熱性能を高めることが可能。
外構も今回ご紹介したフェンスやサンルームの設置、植え木といった設計アイデアを採り入れることで、より快適なパッシブデザインの住まいにリフォームできます。

リフォームでは、自然のエネルギーを採り込むために窓を増やしたり吹き抜けなどをつくると、躯体の強度が変わり、耐震性に影響が出ることも考えられます。そのときは、敷地条件や周辺環境に合わせて住まいの最適解を見つけることが大切です。

パッシブデザインに取り入れたい
LIXILのエクステリアアイテム

風を通しながら視線を遮る「フェンスAB」

フェンスの風通しを良くしようと格子のすき間が大きく空いたタイプを選ぶと、近隣からの視線が気になる方も多いですよね。
フェンスAB」は目隠しに効果的なデザインを充実させたシリーズ。なかでも「YL2型」は、幅の広いフラットな面材を組み合わせたデザインで、しっかり目隠しをしながら風通しも確保できます。

外観に合わせて選べる木調カラーもラインアップ。フェンス裏面も木調になるので、外観だけでなく、室内からも美しい見た目を楽しめます。

窓から侵入する熱を約83%カットする
「スタイルシェード」

窓の外側に設置することで、室内に入る約8割の熱をカットできる「スタイルシェード」。室内の温度を心地よくキープし、夏の暑さ対策や節電に効果的です。

フェンスの柱やバルコニーの手すりなど、シェードの固定方法を選べるので、シェード下の空間を有効活用できます。使い方も日差しが気になったときにサッと引き下げるだけなので簡単。使わないときはすっきり収納できるので、室内に日差しをたっぷり採り込めます。